インクジェットプリンターのヘッド先端には直径20〜30μmの真円の穴が加工されている。この穴を通じて印刷インクが飛び出し印刷される。このヘッドノズルプレートは電鋳にて加工される。ノズルプレートは次の図のように単純に微細な穴が開いているのではなく、裏表の形状が異なっている。このような形状は電鋳技術とリソグラフィーの組み合わせによって実現される。インク滴を紙面に正確に打ち込むにはノズルからまっすぐに吐出さる必要がある。このとき正確に打ち込むには1°の曲がりしか許容されていない。次の図に示すように穴周辺に不均一な濡れが生ずるとインクが表面張力によって引っ張られるため曲がりが生ずる。そのためにノズル表面に溌インク性のめっきを施すことで安定した正確な印刷を得ることが出来る。 |
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3−2.導光板の転写技術 |
液晶ディスプレイ(LCD)では、裏側にある蛍光管の光をムラ無く明るく照らし出すのに偏光板、ガラス基板、拡散板、反射板そして導光板など各種の板が積み重なっている。その中で導光板はアクリル板やPET樹脂などに微細なパターンを形成している。この導光板がNi電鋳によって作られる。アクリル樹脂をミクロン、サブミクロンオーダーで微細加工し電鋳によって表面形状を反転転写する。 |
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3−3.最近の動向 |
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最近はシリコンウエハからの電鋳転写が多くなっているが、SiO2やSiO2+各種スパッタ皮膜が施された状態で持ち込まれるケースもある。また、レジストにおいてもSU8(エポキシ系レジスト)のような強固なレジスト皮膜により凹凸が形成されたものも入荷される。精度も250nmまでの超微細パターンならびに針状や山状の表面の転写電鋳が求められている。 CDスタンパー装置による300μmの電鋳箔では、離型面のゆがみや耐久性に問題が出ることがある。より耐久性を増すには電鋳の厚みを5mmもしくは10mmといった非常に厚い金型にまで引き上げる必要がある。電流密度を短時間で変化させて応力を緩和することも考えられる。パルス電解により析出の結晶を変化させて応力をゼロの方向に持って行くことも検討されている。 |
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3−3−1.応力・歪み |
従来の電鋳金型と呼ばれる部類は、析出電鋳に応力が残り表面に歪みが発生していたとしても、形状が立体的で比較的表面には現れなかった。そのためスパイラルコントラクター応力測定装置などで処理液自体の応力を管理することで比較的安定した電鋳を作成することができた。これに対し最近では、素材がシリコンウエハやガラスなど極端に平面度が高い材質を用いることになって来ている。
最終的に分かってきたことは、如何に均一な電流密度で均一な電鋳をマスターに施すかと言うことに終始する。
母型マスターから離型された電鋳そのものが暴れるということが知られている。例えば、離型直後電鋳転写面のゆがみを測定した際、圧縮側に数μmのオーダーでゆがみが発生していたとする。恒温恒湿槽に一昼夜放置後の測定では、逆に引っ張り側にゆがみが移動していることがある。離型の際に電鋳離型面に外的力が加わって一方向にゆがんだ面が、時間経過と共に変動することがある。 |
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3−3−2.問題点 |
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電鋳製品の金型キャビティーとして用いる場合の問題点は次のとおりである。 |
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1) |
壁面の脱落:抜き角度の出せないシリコンウエハ表面では、離型時のシリコンの破壊による残渣が大きな問題となる。場合によっては、シリコンマスターの溶解を行う。 |
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2) |
Ni電鋳中の浴温度によるマスターと電鋳転写面のずれ:特に微小面でのズレ |
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3) |
離型した電鋳キャビティーを金型にはめ込むためには、正寸加工をする。ここでの加工方法や条件によっては離型面にゆがみが生ずる。 |
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4) |
成形樹脂の性能を高めることでの問題点は、成形時に発生する樹脂からのアウトガスによって金型表面に焼き付きなどの劣化が生じることにある。この点はドライプロセスによる蒸着やスパッリング技法から無電解Niめっきに移行することで解決できるというほど簡単ではない。 |
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5) |
量産品でないため、現物ひとつに対し、導電性付与の方法ならびに電鋳電解条件を設定する必要がある。 |
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4.今後の展開 |
より微細な形状が求められるが、電鋳技術とフォトリソグラフィー技術の融合ならびにその他ナノテクノロジーから創設される技術を用いた超微細形成技術がブレークスルーに繋がると考える。また、ナノプリント技術による超微細パターンの成型方法と電鋳転写技術との関わりも見逃せない応用技術である。
今後の市場からの要求は、大型化である。シリコンウエハをマスターに使っている限り12インチ以上の高精度の大面積電鋳は得られない。アルミニウムの陽極酸化による均一なポーラスな表面や金属表面の微細なエッチングによる凹凸面を用いた表面デザインは、新しい機能性表面を作り出せることが可能である。これらの技法を応用することで超微細な形状を大面積で作り出すことが出来る。アルマイトの表面にNi電鋳を施して離型した表面を示す。形状が崩れているが、撥水性もしくは親水性の微細な凹凸表面が得られる。 |
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5.おわりに |
電鋳技術とその前後の工程である母型マスターの制作(金属やアクリルの微細加工、シリコンウエハなどのリソグラフィーによる微細加工)ならびに金型技術、さらに成形技術といった様々な、生産技術
の向上がより精度の高い製品を作り上げることが可能となる。
めっきや電鋳による商品作りは製造における基幹産業であり、この業界の発展無くしてハイテク産業はなり得ないと考える。 |
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6.参考文献 |
1) 伊勢秀夫:電鋳技術と応用,P.341(1996):
2) 安部保之:実務表面技術,35,8,423(1988)
3) Guide to Nickel Electroforming ,インコ・リミテッド
4) R.T.Howe,R.S.Mulle,K.J.Gabriel,S.N. Trimmer:Silicon
micromechanics: Sensors and actuators on a chip, IEEE,
Spectrum,pp.29-35,July 1990
5) 吉田裕道:マイクロマシンの製造技術/東京都立工業技術センター,2,p.1(1998)
6) 碓井稔:ファインケミカル Vol.24,No.6(1995)
7) 九州日立マクセル「エレクトロ・ファイン・フォーミング」カタログ、9.1999
8) 機能めっき皮膜の物性;電気鍍金研究会編、
9) http://www.vaio.sony.co.jp/Products/Inside/Lcd/index_01_body.html
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※この記事は2004年
5月時点のものです。
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