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マグネシウム合金への耐食めっき


 この技術レポートは、表面処理技術研究会で発表したものです。
マグネシウムの表面処理については、過去に何回か紹介して参りましたが、今回のレポートは実験レポートです。
マグネシウムの表面処理について、化成処理・陽極酸化・塗装などの報文はありますが、めっきの報文はほとんどありません。まためっきしたサンプルを見ることもほとんどありません。
今回のレポートは、屋外で取り扱いの激しい部品への重防食を対象とした実験報文です。

 マグネシウム合金への耐食性めっき処理

株式会社ヒキフネ 三浦昌平

1.緒言
 構造材料として使用可能な金属の中で最も軽いマグネシウム合金は、ごく限られた航空宇宙分野で使われてきた。しかしマグネシウム合金MDプレーヤーの誕生をきっかけに、パソコン、携帯電話等,家電製品に採用され、我々の生活の中に入り始めている。現在話題のマグネシウム合金は腐食されやすい特徴から防錆処理が必要である。防食処理は化成処理、陽極酸化処理後に塗装するのが主な防錆処理で、めっきでの防錆は行われていなかった。本研究でマグネシウム合金にめっき処理を行うことで、十分な耐食性が得られる方法を確立したので、ここに報告する。
2. 実験
2-1試験片

試験片にはチクソモールディングで成形したものを使用した。成形に使った金型は研磨した面とホーニング加工した面の2種類使用した。
表1 試験編の種類
  大きさ 成形方法 材質 金型表面 表面粗さ
40×50×2(t) チクソ  AZ91 ホーニング加工面  測定限界以上
2  40×50×2(t) チクソ  AZ91 研磨面  Ra0.40
2-2めっき方法
めっき方法はマグネシウム合金に、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケルめっきを任意の厚さにめっきして、さらに無電解ニッケル上にジンケート浴にて任意の厚さの亜鉛めっきを施した。無電解ニッケルめっきの厚さは各5、10、15μm、亜鉛めっきの厚さは各、無し、5、10、15μmめっきした。

表2 めっき工程

工程名 時間 条件
脱脂 5分  pH11以上 60℃
エッチング 1分  クロム酸
活性化  5分 40℃
無電解ニッケルめっき 任意の厚さ 無電解Ni−P
亜鉛めっき 任意の厚さ ジンケート浴
クロメート活性化 30秒 硝酸
クロメート 30秒  グリーンクロメート

)各工程には水洗が入る

2-3評価方法
塩水噴霧試験方法にて耐食性を評価した(5%食塩水、温度35℃)。腐食が始まるまでの時間を耐食時間として測定した。
(JIS Z2371)
3. 結果
表3から分かるように、素材表面状態での耐食性の差は大きく影響し、ホーニング加工の金型を使用した試験片の耐食性は、研磨した金型より耐食性が著しく悪かった。また各めっきの耐食性への影響は、亜鉛めっき被膜の厚さよりも亜鉛めっき皮膜の存在が重要で、ニッケルめっき皮膜の厚さにも影響を受けることがわかった。

表3 各条件での耐食性 (時間)

 

無電解ニッケル厚さ (μm)

10

15

亜鉛めっき μm

ホーニング面

0.2

0.3

0.5

0.4

1.5

10

0.5

1.7

15

0.9

1.7

研磨面

0.2

0.5

0.6

0.4

16.0

93.3

10

0.5

12.0

88.3

15

0.9

18.7

78以上

写真1 腐食の様子

写真1:腐食の様子

4. 考察
4-1表面状態での影響

耐食性に影響を与える最大の要因は素材の表面状態によるものと考えられる。写真2と写真3と比較すると明らかに表面の粗さが違う。
写真2 素材表面 ホーニングした面 写真3 素材表面 面研磨した面
写真2:素材表面:ホーニングした面 写真3:素材表面:面研磨した面
×250 ×250
写真4 めっき被膜表面 ホーニング面 写真5 めっき被膜表面 研磨した面
写真4:めっき被膜表面:ホーニング面 写真5:めっき被膜表面:研磨した面
×2500 ×1000
 写真5は研磨した面を亜鉛めっきまで施した表面写真である。表面にはピンホールが見られない。しかし、写真4のホーニング処理の面はめっき皮膜のピンホールが存在している。このピンホールは大きくえぐられた底部に存在している。底部までめっきが付き回わらないのが原因と考えられる。
4-2ニッケルめっき厚さによる影響
 無電解ニッケルめっき厚さは大きく影響し、ニッケルめっきの厚さが増せば増すほど耐食時間が増していることが分かる。めっき厚さが厚くなるにしたがって、無電解ニッケル皮膜のピンホールが減少したものと考えられる。
4-3亜鉛めっき厚さによる影響
亜鉛めっきの厚さは耐食性に大きく影響しないが、亜鉛めっき被膜の存在は防錆性に大きな要因となる。亜鉛被膜の存在が耐食性を向上させる原因は、マグネシウム合金、ニッケル、亜鉛の電位の違いからと考えられる。無電解ニッケルめっきのみでは、図1で示す様にマグネシウムより貴なニッケルがあり、マグネシウムを腐食させる方向にある。したがってピンホールなどの不連続面があれば容易に腐食する。しかし、図2で示す様に、ニッケルより卑な亜鉛めっき層が存在することで、全体の防錆効果が向上されると考えられる。

Niめっき 貴
Mg合金 卑
図1 Niめっきのみの場合 

Znめっき 卑

Niめっき 貴
Mg合金 卑
図2 Znめっきを施した場合
5. まとめ
マグネシウムに耐食性をもたせるためには素材表面が平滑であること、つまり素材欠陥が無いことが望まれる。
無電解ニッケルめっきでピンホールを少なくすることで耐食性を向上させられる。
亜鉛めっきを施すことで耐食性が向上する。しかし亜鉛めっきの厚さは耐食性に大きく影響しない。今後はニッケルめっきの厚さを薄く耐食性がある処理方法を開発する予定である。

※この記事は2000年5月時点のものです。


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