|
3.めっきの原理 |
Tiにめっきする理由(なぜめっきが必要なのか?)は、「酸化膜が強固なため半田付けができない。
」とか「硬度が低く摺動部に用いた際、かじりを生ずる。」など機能的な面での必要性があるからです。他にも「眼鏡、時計、カメラなど
への装飾」を目的としたものもあります。
めっき方法としては、表面を粗化して密着を上げる方法、素材表面を荒らさずにNi、Auを直接めっきする方法など種々の工程が見いだされてい
ますが、 未だこれといった処理方法が確立されていないのが実情です。 |
|
この理由は、 |
|
(1) |
めっきの密着強度が素材表面の状態に左右される。 |
|
(2) |
めっき方法に再現性がない。 |
|
|
などが上げられます。とはいうものの航空機や眼鏡その他にめっきが施され目的を果たしているのも事実で
す。 |
|
現在知られているめっき工程で、チタンへのめっきの密着強度が十分に得られないのは、前述したように、チタンの素材表面に生成する不導態皮膜によることが上げられます。チタンの不導態皮膜は除去しにくく、しかも一旦活性化した面は空気および水にされられることで敏速に薄い酸化膜を再生してしまうことにあります。 |
|
従って、密着強度が満足するようなめっきを得るには次のようなことを考慮する必要があります。 |
|
(1) |
酸化皮膜が除去されたのち、めっき皮膜によって全体が一様に覆われるまで再生成されないこと。 |
|
(2) |
チタンの表面に対し、酸化膜が密着を阻害しないような他のものに置き換える。例えば、アルミニウム上の亜鉛置換法のような処理を施す。 |
|
(3) |
酸化皮膜を適当な方法でめっき皮膜中に取り込む。 |
|
(4) |
チタン素地表面とめっき皮膜の間の機械的密着(樹脂めっきのように投錨効果による密着機構のような処理)を得るために、強力な化学的あるいは物理的なエッチングを行う。 |
|
|
などが上げられます。 |
|
次にめっき工程について概略を説明します。 |
|
 |
|
3−1.エッチング |
先にも述べたようにチタンへのめっき処理では、このエッチングと活性化が密着強度を得るための重要な役割を果たしてい
ます。
チタン金属はフッ酸、ならびに硫酸や塩酸などの還元性の酸に溶解します。フッ酸はチタンを溶解する力が強すぎるため、抑制制御するために混酸とする必要があ
ります。
インヒビターとして硝酸、氷酢酸、硫酸銅、無水クロム酸、エチレングリコールなどが用いられます。 |
|
次の写真は、硫酸とフッ酸によるエッチングの表面状態の違いです。 |
|
 |
 |
|
写真3.硫酸エッチング |
写真4.フッ酸エッチング |
|
|
3−2.活性化 |
種々の方法が提唱されていますが、ここでは最も用いられている方法の活性化について
説明します。
この活性化においてチタン素材は活性化すると共にエッチングされるので表面粗さに関して十分に考慮する必要があります。 |
|
(1) 高濃度硫酸処理 |
|
酸化皮膜を除いた後、 90〜110℃、65%〜90%H2SO4に約1〜2分浸せきする。この時チタンの酸化皮膜が完全に破壊され水素化Tiの皮膜が生成される。浴温が高く反応が早いため十分な確認と調整が必要になる。また、ここで生成した水素化Ti膜は熱および酸に弱いためチタン素材を浴から引き上げた際、直ちに水洗する必要がある。その後、任意のめっきを施すことができる。 |
|
(2) 高濃度塩酸処理 |
|
塩酸は沸騰状態の溶解度が大きくなる。Tiの溶解状態はフッ酸が白色状に溶解するのに比べ塩酸系では黒色スマット状にエッチングされる。 |
|
(3) フッ酸とシュウ酸の混酸処理 |
密着強度は(1)の高濃度硫酸処理に比べ多少劣るが、比較的エッチングされずに下地の表面状態を維持し、処理方法も簡単である。表面が滑らかである。
混酸の組成はフッ化ナトリウム5g/L+シュウ酸5g/Lの溶液に室温にて1分〜10分浸せきする。 |
|
(4) 白金めっき |
|
ASTMに記載されている方法はNo1、2および3のプロセスがある。ここではプロセスNo1について述べる。Na2CrO7・H2O・HFの溶液でエッチングする代わりに熱濃塩酸(温度95℃)にて5分間エッチングし、水洗後直ちに白金めっきを施す。塩化白金酸(H2PtCl6)系のめっき液にてストライクめっきを行う。 |
|
|
|
 |
 |
|
写真5.熱高濃度硫酸処理 |
写真6.左写真後にPt1.5μmめっき |
|
|
3−3.熱処理 |
|
熱処理によってチタンとめっき皮膜との間の介在皮膜(水素化Ti皮膜)を拡散もしくは放出させ且つ、金属間での熱拡散が生ずることで密着強度が向上
します。 |
 |
 |
|
写真7.Ti/Ni熱処理前 |
写真8.Ti/Ni300℃×3Hr熱処理 |
|
|
3−4.めっき方法 |
種々の方法が上げられますが、個別に記載した各処理の組み合わせにより純チタンならびにチタン合金にめっきができ
ます。ただし、前処理で如何に酸化皮膜を除去し、且つ再生成を防止つつめっき入るところまで持ち込んだわけで
すから、めっき初期にも酸化は避けなくてはなりません。
特に酸性のNiめっきやPt(強酸性)めっきは、溶存酸素による酸化が著く、よって、めっき浴注に窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込み酸素を除去する必要があ
ります。特にめっきスタート時には吹き込む量を多くし、酸化を防ぎます。
また、目的とするめっき仕様で十分な密着が得られない場合には、下地のめっきを施し熱処理後に再度めっきを施すなどの工夫が必要です。 |
|
4.まとめ |
チタンを含む軽金属と称されるアルミニウムならびにマグネシウムは、今後大いなる発展が望まれ
ます。その中でチタン材は加工性の悪さが仇となり、めっき素材の対象となりにくかった時期もあり、その中でも特殊な金属として見られてきてい
ました。
現在では、種々の合金組成ならびに加工技術の進歩に伴い、種々の用途が出てきています。機能・装飾と種々に渡り、めっき技術が用いられることを強く望むものであ
ります。 |
|
5.参考文献 |
1) http://www.mozidas.co.jp/G/history_titan.html
2) http://www.sumikin.co.jp/docom/kousan/titan/mudoku.html
3) 金属時評・編集部;新金属データブック
4) 表面技術総覧
5) 永瀬、小森;工業レアメタル、85(1984)
6) 西村;金属表面技術;31,625(1981)
7) 鈴木・森口;チタンのおはなし,日本規格協会,(1995)
8) 草道・村上・木村和泉他;金属チタンとその応用、日刊工業新聞社、(1983)
9) 小林道雄 他1名、実務表面技術、35,6(1988) |
|
|
余談:その1:チタンの歴史 |
この地球にチタン(チタンという名前が付けられたのは1795年で、第一発見者によってではありません)という金属の存在を初めて発見したのは1791年、イギリスのクレーガーです。彼は海岸の砂から採取した砂鉄の中に鉄以外の酸化物を見つけました。この金属は“メナカメイト”と命名されました。その4年後の1795年、ドイツの化学者クロプロート氏がルチル鉱石の大部分がこれまでに知られていない全く新しいものであることを発見し、この金属をギリシャ神話のタイタン(TITANEN:巨人)にちなんでチタン(TITAN)と名付けました。
後に先に述べた“メナカメイト”と“チタン”は同一の物質であることが確認されました。その後、この酸化物から金属チタンを抽出する試みがなされましたが、やっと実験的に成功したのは、何と1910年、発見から120年以上の時間を要したのです。
さらに工業的に金属チタンを製造することに成功したのは、アメリカのクロール博士による製造方を発見してからであり、実用化に至ったのは実に第一発見より150年後の事になります。 |
|
|
余談:その2:チタンは人にやさしい材料 |
|
チタン合金は、無毒という素晴らしい一面を持っています。最近問題になっている、Niアレルギーも心配ありません。チタンは人体との適合性がよく、眼鏡、時計をはじめ人口骨や義歯などに幅広く使われています。チタンは人にやさしい材料なのです。 |
|
|
余談:その3:陽極酸化(電解発色) |
チタンは加熱または陽極酸化処理を行なうことにより、表面に薄い酸化皮膜を生成
します。
この皮膜は、加熱温度×時間、あるいは化成電圧をコントロールすることで厚さを変化させることができます。本来透明なこの皮膜は、ある厚み範囲にあると金属表面からの反射光と
、酸化皮膜表面の反射光とが干渉を起こして、いわゆる干渉光(シャボン玉や水面上の油膜と同様の色)を発色します。 |
|
※この記事は2002年8月時点のものです。
|